カントリー・レビュー(6)


2004/01/01 新年のご挨拶 (+ドリー・パートンのことなど)

◇皆様、あけましておめでとうございます。旧年中は多くのアクセスを賜り、まことに有難うございました。心より御礼申し上げます。今年もコンテンツの充実・更新にいっそう努めて参りたいと存じます。なにとぞ、倍旧のご支援のほどよろしくお願い致します。サイトへのアクセスとともに、皆様のご意見・ご要望などを当方のメールアドレス(ok@ok-corp.co.jp)、又はトップページの掲示板までお寄せいいただければ更に幸いです。そして今年こそ長期デフレ不況の最終的克服へ向け、政府・日銀をして本格的なリフレ(マイルドなインフレ)政策を採用・発動せしめるべく、ウェブによる包囲網を構築して行きたいものです。各サイトや掲示板サイトなどに見られる優れた意見が、ほとんどそれぞれに自己完結してしまっている現状はちょっと残念です。しかしまあ当方なんかは、それ以前の理論的・経済学的蓄積がまだまったく不充分なのですが。

◇これに関連することでひとつ言わせてもらいます。昨年12月29日発行のメール・マガジン『JMM』で、村上龍の「来年度予算の財務省案の骨格が示されました。こんなに「借金」を重ねてだいじょうぶなのでしょうか。」という質問に対して、8人の「金融経済の専門家」が回答を寄せておりました。回答はどれもこれも似たりよったりですが、不思議なことに支出の中味には誰も触れていなかったようです。しかしそれでは「こんなに」という問いへの答えにはなりません。中味に触れていれば、「こんなに」ではなく、逆に「たったこれだけ」であることが問題になりうるはずなのです。中味というのは、例えば消費税減税(例えば現行の5%から2%へ)やいずれ必要になる公共事業の前倒し実施などです。長期デフレ不況と高失業率から脱出できないいま、「だいじょうぶなのでしょうか」と問われなければならないのは、マクロ政策の中味が充分か否かであって、「借金」の大小ではありません。「借金」は国債増発でまかなわれるはずで、これを銀行から日銀が買い上げれば、マネーが大量に供給されてリフレ転換が促進されます。政府の一部門である日銀が、政府の「借金」をリフレ政策として引き受ける限り、もはや「借金」とは言えないでしょうが。要するに、村上龍たちの転倒した議論を包囲殲滅してしまおうということです。『JMM』に代表される経済論議はかなり有害です。どなたかとどめを刺して下さいません?

◇次に話題を変えて、ひさびさにカントリー・ミュージックで行きます。ご存知かもしれませんが、当サイトには「Country Music Review」というページがあります。しかし、チェックして下さっている皆様にはまことに申し訳ないことに、この一年更新できておりませんでした。興味をなくしてしまったわけではなく、新譜の購買意欲をなくしていた次第ですが、昨年末にディキシー・チックス(Dixie Chicks)の『Top Of Tne World- Tour』(Sony Music)のCDが出たのでまずそれを買い、それを聴いてからすぐにDVDを買い求めました。いやこれはもう「最高」と言うほかないシロモノです。ディキシー・チックスのボーカリストであるナタリー・メインズは、昨年ブッシュを批判する発言をして「騒動」を捲き起こしましたが、このライブ・ビデオを観ると、どうやら「アメリカ精神」のようなものがナタリーに取り付いているらしいことが分かります。要するに、ブッシュよりナタリーの方が「エライ」ということです。だいたいブッシュの大統領選挙キャンペーンを通じて、ナタリーたちはブッシュに「貸し」さえあるはずです。

◇そういったような事情は「カントリー・レビュー(3)」を書いた時点でおぼろげながら気づいていたことですが、今回改めて視覚的にも確認できたという次第です。上に言った「アメリカ精神」というのはトマス・ジェファソンやジョン・デューイやフランクリン・ルーズベルトといった人々が体現して来た「あるもの」のことにほかなりませんが、中性的なリーゼント頭で歌い動きまわるナタリーが放射する侵しがたい威厳と、そこに見られるなにものも恐れない勇気や信念のようなものとしてわれわれに迫って来るということです。巨大なライブ会場を埋めたディキシー・チックスのファンたちの多くは共和党の支持者であると思われますが、そしてナタリー自身もブッシュの戦争政策を批判しつつレパブリカンであることに変わりはないのかもしれませんが、しかしそうした党派を超えた「アメリカ精神」が、依然として健在であるらしいことには羨望を禁じえません。こうしたアメリカのグラスルーツの懐の深さがあるかぎり、「アメリカの衰退」などということは当分はありえないことのように思われます。

◇ライブにおけるナタリーの歌についてひとこと触れておきますと、当然のことながら、スタジオ録音よりもずっと自在で伸びやかでブリリアントです。ですから、われわれとしてはここでも美空ひばりを思い出さないわけには行きません。ともかく、是非ご一聴(CD)、あるいはご一見(DVD)を。さて、美空ひばりと言えば、アメリカの歌手ではどうしてもドリー・パートン(Dolly Parton)を外すわけには行きませんが、彼女も『For God And Country』(Welk Music)というニュー・アルバムを出しました。ジャケットは星条旗をバックにした星条旗縞ミニスカ・スーツ姿のドリーさん。曲もアメリカをたたえるものが中心で、どこをどう取ってもイラク駐留のアメリカの兵隊さん、そして出征兵士の家族たちに捧げられたアルバムであることは、疑う余地がありません。しかし、にもかかわらず、荘厳かつユーモラスではあってもパセティックなところはいささかもありません。「なかなか慰問に行けないのでこれで勘弁してちょうだい」と言っているようです。もちろんこれも「最高」のアルバムです。なにしろドリー・パートンはアメリカの美空ひばりですから。

◇ドリー・パートンのアルバムの素晴らしさは選曲から言っても明らかで、"星条旗よ永遠なれ"や"God Bless The USA"や古い戦争(反戦)歌謡から、バリー・サドラー軍曹の懐かしのナンバー・ワン・ソング"悲しき戦場"(1966)、そしてトニー・オーランド&ドーンの特大ヒット"幸せの黄色いリボン"(1973)までが歌われます。しかし極めつけは、やっぱりドリーさんの自作曲です。なかでもEの"Welcome Home"、Iの"Red, White And Bluegrass"、そしてPの"Color Me America"。特にPは前線の兵士たちとの一体化を希求する歌で、こういうのを歌ってもらえるアメリカの兵隊さんは幸せです。しかも、歌っているドリーさんがアメリカの国民的歌手で、下のジャケットの通りますますキュートでセクシーと来ておりますから(当方より5つも年上なのに!)、言うことはありません。実際前線の兵士たちはもとより、アメリカ全体がいま極めて困難な局面にあるわけで、理非はともかくまずは兵隊さんとその家族を支えなきゃ、というドリーさんの心意気には胸が熱くなります。ここには60年代初頭、公民権運動に立ち上がったPPMなどとほとんど同じエートス(=「アメリカ精神」)を感じます。両者ともアメリカ的価値を確信しているという点では同じだということです。

◇言うまでもなく、国家という共同体はドリーさんみたいな人々に支えられております。ブッシュの戦争政策を批判したナタリーにしても、前作の『Home』に収録された"Travelin' Soldier"(もちろん『Live』でも歌っています)でベトナム戦争の戦死者たちへの極めつけのレクイエムを歌っていたわけで、愛国者であることに変わりはありません。日本にもミス・コロムビア(松原操)の「兵隊さんよありがとう」をはじめとする多くの歌を生み出した戦時歌謡の伝統がありましたし、「九段の母」等のスタンダード浪曲もいろいろと残っております。しかしいまの日本ではそれらは過去形でしか語られません。そういう現実を悲しいとは思いませんが、上に述べたような長期デフレ不況とそれがもたらす失業率の高止まりという日本の本当の窮状には目を閉ざし、政府の「浪費」を批判して自らの「良心」を満足させるというようなふるまいは、やはりどこかおかしいんじゃないでしょうか? もちろん、おかしいのは彼らの感性と言うより、彼らが持っている(持たされている?)「奇妙なロジック」の方なのでしょうが。だいたい当方は村上龍の小説の愛読者ですから。つまり、「ねじれ」ているのは戦後の日本だけではないということです。ともあれ、愛国主義レフトとしては、この日米の対照的現実を是非指摘しておきたいと思います。

◇それでは、また。少し休暇をいただいて、1月4日頃戻る予定です。

                     

◇追記:いまとなってはいささか古いものですが、当カントリー・ミュージック・レビューをチェックしてくださっている方がまだおられることを知り、こちらにアップさせていただきました。初出は「管理人のつぶやき」というページです。はじめAARON WATSONて誰のことか分かりませんでした。かなりひどいことになってます(^^)。ともかく有難うございました、よしさん。ALLISON MOORERかKIM RICHEYかMARY CHAPIN CARPENTERか石田美也さんの新作が出れば、また更新できると思うのですが・・・。【2004/04/03 CR生】

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